猫兎ライフ

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【読書感想文】旅する知/船曳建夫

文化人類学者である船曳さんが、いろいろな国を、世紀をまたいで旅して感じたことが書かれている本です。

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目次

はじめに 旅すること

船曳建夫のこの本に関わる旅と略歴

第1章 サンクトペテルブルグ ロシアは悩んでいる

第2章 ニューヨーク アメリカは不安だ

第3章 パリ パリは出会う

第4章 ソウル 韓国は変わる

第5章 ケンブリッジ 英国はふるまう

第6章 変わる、変わらない

おわりに 未来を旅するあなたへ

 

以下、気になったフレーズと感想をのべていきます。

 

親の客への接待を頼まれ、きちんとこなして挨拶をして出て行くその少年が、私には好ましかった。そのことが、私にとってアメリカを感じさせた。親子の関係にも距離と信頼と義務があり、社会的な他者としての客にきちんとした礼儀がある。

欧米って、こういうところがあると思います。社会の中での線引きがうまいというか。

 

若いとはまことに不遜なもので、そのときも、そのあとでも、かなり長い間、大人の他人が時間やら都合やら何かを犠牲にして若い自分を助けてくれたことに気づかなかった。しかしそれは、若い者が順番にそうした不義理を行い、年をとってそれに気がついて若いものを助けてやる。人類学で言う「遅れた返礼」だ。人類全体のつじつまは合うのだ。

少々長いですが、自戒の念を込めて引用しました。私も今まで、多くの人に助けてもらっていきましたが、いつかは与える側になるのでしょうか。

 

なぜパリに行ったのか、といえば、そもそも、外国というものがあるのか、という疑問を晴らしたかった。

 これは私も、実際に国外に行き外国の国土と、そこに住む外国人を自分の目で見るまでは、少し疑っていました。本当に日本以外の国が存在するんだと、感動したのを覚えています。

 

ー韓国に安いホテルはない!

一瞬に私は了解した。私の語彙の貧しさによる「cheap」が失礼だった、という単純なことではなく、いまに至るまで「歴史認識」と呼ばれる冷たい鉄板に、私が足を下したことを。

 韓国の人って、コンプレックスがあるのか、歴史のこととなると、些細なことで突っかかってくる節があるように思います。歴史に翻弄されるのは、半島国家の宿命なので、哀れにはおもいますが。

 

最近、よく、日本の江戸時代にも和算や測量術、さまざまに高度な道具が作られた、という事実が取り上げられるが、科学の根本は探究の精神にあって、形になった技術や道具でないことを忘れてはならない。

日本人って、形あるモノになると強いけど、抽象的な思考や理論となると弱いような気がするのは、私だけではないと思います。

 

アメリカには社会はあっても「世間」はない。

日本は逆に、世間はあっても「社会」はない、といった感じでしょうか。

 

【まとめ】

やはり、世界中を旅すると見識が広がるのでしょう。上には紹介しきれませんでしたが、とても興味深い内容盛りだくさんでした。日本にいると、「世間」のしがらみばかりでうんざりしがちなので、たまには違った見地に触れてみるのも良いかもしれません。

 

旅する知――世紀をまたいで、世界を訪ねる

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