猫兎ライフ

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ユートピアは人を幸福にするか?【読書感想文】断絶への航海/ジェイムズ・P・ホーガン

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彼らは子供たちに、自分らは銃火にさらされることもない頑固な老人たちのために命を捨てるのが高貴なことだなどと教えたりはしないし、赤の他人の妄想を達成させるために大量虐殺の場へ送り出したりもしない。ケイロン人は、そんな戦いかたはしないのだ。

【紹介】

星を継ぐもの』で有名な、ジェイムズ・P・ホーガンSF小説です。

【感想】

地球が限界だっていうんで、移民船を打ち上げていたら、良い環境の惑星を見つけたという話です。そこでは、豊富な資源とテクノロジーによって移住した人々は文字通り何不自由のない生活を送っています。

移住先である惑星ケイロンからの連絡により地球人はこの星に降り立ちますが、支配階層も通貨も存在しないケイロンの文化に戸惑います。無限に資源がある状態では、支配者もお金も意味をなさなかったのです。

まさに理想郷とも言える環境のケイロンですが、地球人は既得権益の保護や、疑心暗鬼、宗教的な妄執などが原因で自ら争いの種を蒔いてしまいます。

ここでは結末は述べませんが、人間が争う理由について考えさせられる内容でした。

十分な資源があり生存に困らなければ、命をかけてまで争う理由はないはずなのですが、地球人は戦いを選びます。現実の世界でも、文明が発展して、昔と比べて生活の質は向上しているはずなのに、争いは絶えません。戦争は資源の分配の問題以前に、人間の性が原因なのではないかと、考えてしまいます。

(おわり)

 

断絶への航海 (ハヤカワ文庫SF)

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