【紹介】
三島由紀夫の小説です。
潮騒と書いて、「しおさい」と読みます。「ちょうそう」ではありません。
【Amazonレビュー】
78件のカスタマーレビューがあり、星5つ中の4.5個と高評価です。
【感想】
三島由紀夫といえば、割腹自殺が有名です。彼の作品を読んだのはこれが初めてなのですが、もっと暗い小説を書くのだと思っていました。この本は、暗い結末にはなりません。
ネタバレになるので詳しくは書けませんが、田舎での恋愛物語です。自然や人のやりとりなど、情景の描写が素晴らしく、近年の小説では読むことのできないレベルでした。
作中の気になる描写を紹介します。
・・・女をたくさん知っている若者だったら、嵐に囲まれた廃墟のなかで、焚火の炎のむこうに立っている初江の裸が、まぎれもない処女の体だということを見抜いたであろう。
この乳房を見た女はもう疑うことができない。それは決して男を知った乳房ではなく、・・・
昭和らしい、処女信仰的な記述が見られました。普通に考えれば外見で判断できることではないので、この時代のレトリックとしては一般的なものだったのでしょう。
母親の素直な心は、少女の謙譲をまっすぐにうけとった。・・・(中略)・・・島の政治はいつもこうして行われるのだ。
島社会というか、村社会というか、女社会というか、古き日本の社会を知るてがかりのようなものが記されていました。過去の生活の様子を知るためには、教科書なんかに頼るよりも同時代の小説を読んだ方が理解が深まりそうです。
自己啓発本などから離れて、たまには古い文学作品を読むのも良いものです。
(おわり)