猫兎ライフ

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私がピース又吉の『火花』を読まなかった3つの理由【読書感想文】火花/又吉直樹/文藝文春

   

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火花

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1.お笑いに興味がないから

この本の主人公は漫才をする芸人です。ストーリーも漫才を中心に進んでいきます。私はお笑いに興味がなかったので、この本にも読む気が起きませんでした。嫌いではないのですが、テレビなどでお笑いが流れていても見る気にならないのです。立ち読みして、最初のシーンが漫才の場面だとわかり、本を閉じて元の位置に戻しました。

2.大阪弁に慣れていないから

私は生まれてこのかた、大阪弁圏で生活をしたことがありません。関東が生活のベースとなっています。北海道から沖縄まで、様々な方言を話す人との出会いはありましたが、大阪弁の文章にリアリティを感じることができませんでした。なんだかわざとらしく感じてしまうのです。店頭で見かけるたびにパラパラとページをめくりましたが、大阪弁の文章がどうにも不自然に感じてしまい、読む気が起きませんでした。

3.話題になりすぎていたから

有名な芸人の著書ということで、連日メディアは賑わっていました。加えて芥川賞も受賞し、猫も杓子も「火花」を読む、というような状況でした。若干の天の邪鬼気質がある私は、そんな状況を見て一気に読む気が失せました。

【それでも今さら読んだ理由】

まず、1つ目の理由である「お笑いに興味がない」という点について、興味のない分野の見識も広めたほうがいいかな?と考えるようになったからです。自分の興味のある分野の本だけ読んでいては、どんどん視野が狭まってしまいます。お笑い番組しか見ず、ニュースに一切の関心を払わないのは問題ですが、その逆も同じように問題なのかなと思うのです。

2つ目の「大阪弁に慣れていない」も同じような感じです。大阪弁だからといって読まず嫌いしていては、読める本の範囲が狭まってしまいます。ラテン語の原書を読むような無茶な話ではないので、自分の可能性を広げるためにも読みたいと思いました。

最後の「話題になりすぎていた」に関しては、自分の中で適切なクールダウンの時間が取れたと感じたからです。発売当初の熱も冷め、書店での陳列もだいぶ落ち着いてきていました。そんなある日にふとこの本を手に取り、「これは読めるな」と感じました。

【感想】

とても面白い本でした。「話題の本」と身構えて読むと、粗探しをしてしまいそうですが、適度に期間を置いてから読んだので、純粋に楽しむことができました。お笑いの世界というのが全くわからなかったのですが、ちょっと興味が持てました。主人公は結局芸人としては大成せずに話は終わってしまうのですが、芸人の苦労や生活ぶりなど、普段知り得ることのない世界をのぞくことができました。もちろんフィクションなのでしょうが、本物の芸人さんだからこそかけた小説だと思います。

(おわり) 

火花

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