世の中は本当にどうでもいいニュースで溢れている。下らない俗世に辟易しているそこのあなたにオススメなのが、この『サイエンス ペディア 1000』です。
【紹介】
科学の様々な分野のことが1000項目にまとめられている本です。
物理学
化学
生物学
地球
宇宙科学
健康・医学
社会科学
情報
応用化学
未来
(目次より)
【感想】
「下らない、下らない」と言いつつも、逃げることができないのがこの世界。 俗っぽさや下らなさも含めて愛すべきこの世の中ですが、どうしても耐えられない時は理科系の本を読むに限ります。現実に起きている問題がいかに小さいことか思い知らされます。
何もない空間も、実は空ではない。(項目:仮想粒子より)
普通に読めば、全く意味のわからない文です。「何も見えない空気中にも実は窒素分子や酸素分子がある」というレベルの話ではなく、本当に何もない真空宇宙のような空間での話なのです。「保育園がない空間も、実は空き地ではない」とか「不倫してない人も、実は不倫してなくない」とか現実に当てはめてみても理解不能です。(この項目は量子レベルでの話なので、目に見える範囲では起こり得ません。)
この本の優れている点は、専門的過ぎないというところです。専門書ではなく、あくまで読み物なので各項目はわかりやすい言葉で丁寧に記述されています。
赤信号に向かって高速に移動すれば、短波長の緑色に変化する。ただし、それを体験するには光速のおよそ18%という速さで赤信号に突進しなくてはならない。(項目:ドップラー効果より)
光速の18%を時速換算すると、約19億km/hとなります。こんな速度まで一気に加速したら中の人はおそらく無事では済まないでしょうし、もはや空気抵抗で蒸発するレベルの速さだと思います。このように、役立つのかどうなのかさっぱりわからない身近な例を交えて書かれています。
適度にカタカナが登場するのもまた良い点です。例えば、「シュバルツシルト半径」をご存知ですか?
シュバルツシルト半径は、一定の質量を持つ物体がブラックホールになるために押し込められなければならない大きさを与える。…(中略)…地球のシュバルツシルト半径はおよそ1cmだ。(項目:ブラックホールより)
ゲスの議員、ゲスの歌手、ゲスの不満足、保育園、公用地、12球団、バドミントンのラケット・シャトル、ベッ◯ー・・・それら全部ひっくるめて地球ごと超圧縮してブラックホールにすると、半径1cmほどの球体になるということです。これほど圧縮されては死んでしまいそうなものですが、ブラックホールの表面は「事象の地平線」と呼ばれ、通常の物理法則が成り立ちません。なにせ光でさえその重力から逃れられず吸い込まれてしまうほどです。ブラックホールに吸い込まれるとホワイトホールから吐き出されるという説もあるので、ゲスはどこに行っても滅びないのかもしれません。さて、この聞きなれない「シュバルツシルト半径」ですが、そろそろブームが来ると個人的に思っています。大学入試や入社試験で「地球のシュバルツシルト半径は?」と問われたら、ドヤ顔で「1cmです」と答えましょう。ここテストに出ます。
紹介するのはこの程度にとどめますが、他にも興味深い内容盛りだくさんでした。アリの頭を爆発させる寄生生物、スターウォーズのTIEファイターにも搭載されているイオンエンジン、現代の錬金術、空の青さと海の青さの理由などなどです。
理系・文系にかかわらず楽しめる本です。
(終わり)