【紹介】
「教団X」などを書いた中村文則さんの本。初版は2017年8月25日発行。
【感想】
いままで中村文則さんの本を読んだことはなかった。この本は書店に並べられていたのを気になって手に取り、少し読んで面白そうだと思い、買った。
この本を一言で表すなら、「既視感のあるディストピア」だ。どこかで読んだことのある話、ではなく現実世界で見たことがある感じがする。熱狂的な宗教教義を掲げてテロや戦争を起こす国、目先の幸せのことしか考えない人々、国民全員が所持する携帯端末、圧倒的な与党、ネットに飛び交う憎悪の言葉と幸せアピール・・・等々。どこかで見たことがあると思ったら、我々の生きる現実そのものじゃないか。この世界も一歩道を間違えば、あるいは見方を少し変えるだけで立派なディストピアになるのだと実感させられる話だった。
一貫して救いがないのもまた良い。
(おわり)