【紹介】
盲目の女性研究者による著書です。厳格なシーク教の家庭に生まれ、それとは対照的な自由の国アメリカで育った彼女は、「選択」に興味を持つようになり、大学での研究テーマにしました。この本は、アイエンガー教授の研究を、わかりやすく書籍化したものです。
【概要】
「選択」について、とことん書かれています。選択の余地が寿命に及ぼす影響、文化の違いによる選択の違い、他者からの影響、バイアス、選択と予知の「鶏が先か卵が先か」問題、多すぎる選択肢の弊害、重大な選択を迫られた際の苦悩などか書かれています。
動物実験や統計データ、実験結果などのファクトに基づいて書かれているため説得力があります。個々の事象は心理学の本などで見かけたこともありますが、「選択」についてここまでとことん突き詰めている本は初めて読みました。
【感想】
選択の意義について考えさせられる本でした。選択の予知がないと感じた動物は、苦痛から逃れる気力さえも失われる、といった実験結果が示されていました。また、衣食住が確保されているはずの動物園の動物たちの寿命は野生の動物よりも短いそうです。動物園のような閉ざされた環境では、自分の選択により影響を及ぼすことのできる事象が限られているため、生きる気力を失ってしまうのでしょう。そしてこれらは、人間にも当てはまるのです。職業階層の低いグループでは、階層の高いグループに比べて2倍以上も心臓病での死亡率が高かったそうです。この結果には、仕事に対する自己決定度の高さが大きく関わっているのだといいます。仕事でこき使われて、生気を失っているように見える人がいますが、どうやらあれはリアルに生命力が低下しているようです。注意してあげましょう。
あとひとつ興味深かったのが、
「その他大勢からは離れ、かといって突飛ではない選択肢を、人は追う」
ということです。人と話をしていると必ず「俺は変わっているぜ」アピールをしてくる人がいます。どうやら人は、他人と同じということに耐えられないようです。数名で定食屋に行くと、なんとなく人の頼んだメニューは敬遠したくなってしまいます。人が持つこの特性を自覚していないと、知らないうちに望まぬ選択をしてしまう可能性もあります。「から揚げ定食を食べたかったけど、他の人が頼んじゃったからサバの塩焼き定食にしようかな?」という具合です。「平均以上効果」というのもまた面白かったです。人は誰しも自分の能力を平均以上だと思っているそうです。電車などで乗り合わせた人達を見て、「こいつら全員、毎日をなんとなく過ごしているロボットのようだ!この世でユニークなのは自分だけだ!」と思ったことはありませんか?どうやらあれは、みんながみんな相手のことをそんな風に思っているらしいですよ。
生きていれば、選択に直面する場面は多々あります。選択に影響を及ぼし得る要因や、選択がもたらす作用について知っておくことは、今後の人生に大いに役立つと思います。
- 作者: シーナ・アイエンガー,櫻井 祐子
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2010/11/12
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