猫兎ライフ

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なぜ日本人は、こんなに働いているのにお金持ちになれないのか?【読書感想文】渡邉賢太郎/

   

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世界40カ国を旅して分かった!お金の仕組み(オビより) 

 

【紹介】

リーマンショックを機に、三菱UFJスタンレー証券を退職した著者が、「お金とは何か?」をテーマに2年間で40カ国を旅した記録です。

 

   

 

【感想】

今まで読んだお金に関する本の中で、一番わかりやすい本でした。

私たち日本人は、お金に関してあまりにも無知なまま大人になってしまった...(本文より)

日本人がこんなにも働いているのにお金持ちになれない理油は、お金に対する無知だと著者は気付きます。この本では、お金の「仕組み」や「扱い方」を各国の旅行記と合わせてわかりやすく説明されています。

 

私たちはお金に困らない生活を与えられてきたからこそ、お金に無知になってしまったのです。(本文より)

学校ではお金については教えてくれません。お金は経済学ともまた違うものです。日本では、お金に対する知識がなくても、なんとなくで生きていくことができてしまいます。学校を出て、定職について、一生勤め上げる。高度経済成長時のワークスタイルの弊害が、今の不景気な世の中になって噴出しているのです。

 

値札があることで、私たちは知らずのうちに、モノの価値を自らの目で見極め、交渉する力を失ってきたのではないでしょうか。(本文より・インド)

「定価」というシステムは確かに便利ですが、それによって失われるものもあるようです。日本人は学校の勉強は優秀かもしれませんが、市場の過酷な値段交渉と目利きに鍛えられたインド人にはビジネスの場では劣勢に立たされます。

 

なぜ、遠い異国で行われたデタラメ(あるいは、勘違い)が、私たち日本人のお金を減らすことになるのか?(本文より・日本)

先のリーマンショックにより、日本を含め世界中が大恐慌に巻き込まれました。証券会社の策略と最新の金融工学により、現代のお金の流れは極めて複雑になっています。ちゃんとした知識もなく金融商品を購入すると、気づかぬ間に自分の資産を減らしてしまいます。そもそも、今の金融市場はコンピューターによる高速取引と、プロ集団であるファンドによる高額かつ戦略的な取引に支配されています。素人が首を突っ込んで無事でいられる世界ではありません。

 

「お金」が発明されて初めて人々は好きなことを仕事にする自由を手にした。

もともとは、お金とは人間の「働く」という行為を多用で豊かにする偉大な発明だったのです。(本文より・エジプト・トルコ・イラン)

お金(=貨幣)の発明により、人は物々交換から解放されました。 お金により富の蓄積、保存が可能になりました。価値の流動性が高まったので、直接的に生活に関わらない仕事(芸術など)でも食っていくことが易しくなったのです。お金に苦しめられることの多い我々人間ですが、そもそもお金は私たちの生活を便利にするために生み出されたものなのです。

 

互いが信頼し合う事で初めて価値が成立する。これが、現代のお金の本質です。(本文より・中国)

 昔は、お金を銀行に持っていけば同等の「金」と交換してもらうことができました。いわゆる金本位制です。しかし、経済の発展とともに金本位制では流通する貨幣を賄いきれなくなり、現代のお金は「金」との交換が保障されないお金(不換紙幣)となりました。一万円札はそれ自体はただの紙切れです。みんなが「一万円札は一万円分のものと交換することができる」と信じているから貨幣として成り立っているのです。この共通の認識がなくなり、お金に対する信頼がなくなるとインフレが起こり、お金の価値がガクッと下がります。教科書などでショッピングカートいっぱいに紙幣の束を入れて買い物をする市民の写真を見たことがあると思います。

 

私たちはお金を使って、「他者の時間」を使うことができます。(本文より・バングラデシュ)

お金のもつ力とは、ずばりこれです。お金を使えば、他人の力を行使することができます。自分ではできないことが可能になったり、生活がちょっと便利になったりすることでしょう。しかし「お金=幸せ」ではありません。自分の力の及ぶ範囲内で生活しようとする者にとっては、高額なお金は必要ありません。

経済的・物質的に豊かな日本に暮らす私たちは、あらわになった世界の様々なライフスタイルや製品、サービスの情報のおかげで「ほしいモノ」「行きたい場所」「やりたいこと」は増えるばかり。結果、どれだけ経済的に豊かな状態に生まれても、描く理想が高すぎ、それを実現する現実的な力とのギャップが大きくなると、不安や不満を感じてしまうのです。(本文より・バングラディシュ)

 

お金への価値観は働く目的と直結している。

お金を「道具」として捉えている人は、保有するお金の量に関わらず、幸せな人生を送っています。(本文より・デンマーク

日本人は働きすぎだとよく言われます。過剰な超過勤務や、私生活を顧みない働き方が目立ちます。前述の通り、経済的な環境に恵まれた日本人は、働く目的やお金とは何かということとよく向き合うことなく仕事をしてしまっているのです。

 

「つながりキャピタリズム」(本文より・終章)

お金が信頼で成り立っているのならば、お金を「信頼の媒体物」として捉えることもできます。そうすればビジネスはもっとポジティブなものとして考えることができます。また、お金ではなく本当に信頼だけでサービスのやり取りをすることも可能になってきているようです。この本で紹介されている「カウチサーフィン」は、個人の信頼情報だけでほぼ無料で他人の家などに宿泊できる サービスです。

 

 【まとめ】

 お金に対する知識がないと、お金に振り回されてしまいます。また、お金もそうですが現在の経済システムも未だ発展途上です。常に「お金」や「働き方」といった根本的なところに関心を払っておかないと、知らず知らずのうちに自分の感覚が現実と乖離してしまい、苦しむことになってしまいそうだと感じました。

(おわり)