【紹介】
朝井リョウさんの2009年のデビュー作です。
【感想】
「え、ガチで?」(本文より)
冒頭からこのセリフで、いかにも若者らしい小説だという印象を受けていました。ケータイ小説のような安っぽい話だという先入観から、長らく読むのを避けていましたが、書店で見かけて気になったので買って読みました。
読後の感想は、「人の価値観はうつろうものだな」ということです。高校生くらいの若者独特の言葉遣いに、今の私は違和感を感じましたが、若い頃は普通に使っていたはずなのです。どのグループに属するかということが非常に大きな意味を持っていたり、グループには自然と”ランク”がついてしまうということや、体育の授業の独特な雰囲気も長らく忘れていました。
そして、高校時代に重要であったことは今となってはもう価値のないことがほとんどです。社会人にもなって、誰とつるむかが重要だなんて聞いたことがありません。10年20年の間に、人の価値観は大きく変わってしまうのだと実感させられました。
高校生独特の価値観に振り回される登場人物の中にも、輝いて見える存在もいました。それは、「本当に好きな事をしている人」や「他人の評価を気にせず人付き合いをする人」です。
人の価値観など簡単に変わってしまうのだという無常観を突きつけられるとともに、普遍的に価値を持ち続けるものも存在するのだという希望も見いだす事のできる話でした。
(おわり)