【紹介】
ベストセラーとなった「嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え」の続編です。
【感想】
もともと、続編を書く予定はありませんでした。(あとがきより)
今回、哲人のもとを訪れた青年は教師になっていました。青年は、学校教育の場でアドラー心理学が通用しないことを嘆き、アドラーと決別しようとしています。
著者があとがきで述べているように、もともと続編の予定はなかったそうです。にもかかわらず続編が出たということは、よほど反響が大きかったのでしょう。ベストセラーにはなりましたが、「現実では通用しない」という類の批判が多かったのではないかと推察されます。
「褒めず叱らず」「すべての行動には目的がある」「課題の分離」等、内容的には前作と同様のものですが、今作は学校教育にアドラ心理学を当てはめた一例のような体裁になっています。
今作で一番重要なのは、
哲学は学問というより、生きる「態度」なのです。(本文より)
という点だと思います。「相手を変えることはできない」というのもアドラー心理学の特徴であり、これを修めたからといって劇的に何かを変えることのできる類のものではないのです。あくまでも変えることができるのは自分自身で、相手に変化が訪れるかどうかは「相手の課題」なのです。
きっとあなたは、アドラーの思想を魔法のようなものだと感じていたのでしょう。その杖を振れば、たちまち全ての願いがかなうような。(本文より)
この本は、「嫌われる勇気」を読んだけれどいまいち釈然としていない人にオススメです。 私自身も「嫌われる勇気」を題材に人前で話をする機会があったのですが、「褒めなければ、どう人を評価するのか」「褒めず叱らずというが、組織では信賞必罰は必要なのではないか」等の議論が起こりました。アドラー心理学を現場に持ち込むのは難しいのかなと感じていましたが、この本を読んで議論や葛藤することも含めて哲学なのかと思うに至りました。
(おわり)