【紹介】
禅の本です。もとはヨーロッパ向けに書かれた英語の論文を、和訳したものです。
【感想】
なぜ、英文を再翻訳するような二度手間をするのかと思っていましたが、「はしがき」の文を読んで、この手間にも納得させられました。
今から千年前の表現法、東洋の一角で形成されたものを、そのまま今日世界一般の読者に押しつけるわけにはゆかぬ。(本文より)
英語圏向けに書くからには、難しい仏教用語や概念も、分かりやすく説明されているはずです。近代化・西洋化し、宗教的な下地も少ない今の日本人にもぴったりだと思います。
私は長らく、禅問答というものを誤解していました。問いに対して坊主が適当なことを答えているものだから、なんと不誠実なんだと思っていました。
禅は、議論したり、学説を立てたり、説教したり、説明を試みたりすることを拒む。それどころか、自分の中から出てきた問いに対する答えは、自分の中に見つけ出せ、と言う。なぜならば、答えは問いのあるところにこそあるからである。(本文より)
禅は、形而上学的な議論を嫌い、問いへの答えは自分自身の中にあるというのが基本スタンスです。
「われわれは毎日着物を着、食事をとらねばなりませんが、どうしたらこのようなことから逃れ得ましょうか」とたずねられた。師はこう答えた、「われわれは着る。われわれは食らう。」(本文より)
おそらく、この質問者は、服を着たり食事をすることへ煩わしさを感じていたのでしょう。当然、生きている以上そうしたことから逃れられるはずもなく、師はただ当然の真実のみを答えています。おそらく、質問者もこのことは理解していたはずです。
このように、「答えは問いの中にある」という考え方を知っていると、ふざけているように感じてしまう禅問答への理解も深まると思います。
故スティーブ・ジョブズをはじめとして、各界で活躍している人が「禅」を生活に取り入れています。禅の入門書としてはこれ以上の本はないと思います。
(おわり)