【紹介】
『菜根譚』は今から三百数十年前、中国明代の洪自誠が人間いかに生くべきかを、様々な角度から論じた人生指南の書である。(裏表紙紹介文より)
【感想】
福沢諭吉の「福翁自伝」か、新渡戸稲造の「修養」でよく登場していた本です。どちらに出ていたか、記憶は定かではありませんが、お札になるくらいの人も読んでいた本です。
いもや大根のようなごくありふれた食物を食べる生活の中に、本当の人生の味わいがある…(本文より)
この一文に、この本の言わんとすることが要約されています。アランやラッセルの幸福論でも説かれていることですが、お金や地位・名誉などを追い求めた先に幸福は訪れません。菜根譚は、他人の価値観に踊らされずに生きることの大切さを教えてくれる、まさに中華版の「幸福論」といった感じの本です。
人と作りて、甚の高遠の事業無きも、俗情を擺脱し得ば、便ち名流に入る。学を為して、甚の増益の功夫無きも、物累を減徐し得ば、便ち聖境に越ゆ。
[訳文]平凡な人間と生まれて、特別になにも高尚で遠大な事業をしなくても、ただ名誉や利益にひかれる世俗的な心を払い落とせたなら、それでもう名士の仲間に入ることができる。学問をなして、特別になにも学識を増す努力をしなくても、ただ外物によって心をわずらわされることを減らし除くことができさえすれば、それはもう聖人の境地に到達できる。(本文より)
これも、特に気に入っている文の一つです。平凡な人生の、なんと尊いことでしょう。平凡な自分に耐えられずに、円環の理と成り果てたどこかの魔法少女に教えてあげたいくらいです。
(おわり)