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日露戦争の歴史【読書感想文】『日露戦争史』半藤一利/平凡社

   

 

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【紹介】

日露戦争の歴史が書かれた本です。

 

日露戦争史 1 (平凡社ライブラリー)

日露戦争史 1 (平凡社ライブラリー)

 

 

【感想】

日露戦争は、1904年から1905年にかけて日本とロシアの間に行われた戦争です。陸は奉天会戦、海は日本海海戦という2つの大きな戦いを経て、日本は勝利を獲得します。国力で圧倒的に劣る日本が大国ロシアを打ち破った戦争であり、陸・海軍で活躍した秋山兄弟を描いた「坂の上の雲」などの小説も有名です。

華々しい勝利でしたがその実はギリギリの辛勝であり、時の指導者の尽力と民衆の忍耐とによるものでした。しかし、この日露戦争での勝利がのちの太平洋戦争の悲劇につながったと作者は指摘しています。

太平洋戦争の真の敗因は日露戦争の”勝利”にある。この戦争を境にして、日本はそれまでと違う国に、日本人は別の人間になってしまった。(カバー裏より)

日露戦争での勝利が太平洋戦争での敗北につながってしまうとは、なんとも皮肉なものです。この「日露戦争史」と「昭和史」を両方読むと、いかに明治の指導が先を見据えた優れた人たちであったかと感心するとともに、昭和の指導者の無能さに疑問を抱かずにはいられません。

昭和の政治・軍事の指導者のように、大言壮語をいい放ち、「男なら清水の舞台から眼をつむってとびおりることが大事なのだ」(東条英機陸相の言葉)などと無責任な言辞を弄して、無謀な決断に酔いしれることなど明治の指導者はしなかった。(本文より)

また、一度始めた戦争を終わらすのがいかに難しいかということもこの本は伝えてくれます。 

一戦争の勝利に陶酔するよりも、そのたびに巨大な虚無をのぞきこむ。それが指導者にとっての戦争というものであるのかもしれない。(本文より)

 争いがいかに終わらせ難いものであるかは、世界中のテロや紛争を見れば明らかです。現在の日本の周辺は友好的な国ばかりではありませんが、どうか戦争は最後の手段であってほしいものです。

(おわり)