【紹介】
2015年のノーベル文学賞を受賞した著者の本です。これは第二次世界大戦に従軍した女性から聞き取った内容を本にしたものです。
ソ連では第二次世界大戦で百万人をこえる女性が従軍し、看護婦や軍医としてのみならず兵士として武器を手にとって戦った。(裏表紙より)
【感想】
涙なくしては読めない本でした。
戦争というと、男は武将の活躍や指揮官の駆け引きなど華々しい面を見てしまいがちです。「キングダム」や「銀河英雄伝説」のようなイメージです。しかし本当の戦争というのはとても残酷で苦痛に満ちたのもです。
この本を読むと、いかに戦争が人間の身体を、精神を、尊厳を傷つけるかがわかります。
半年経って過労から私たちの身体は女ではなくなりました。あれが止まってしまったんです。(本文より)
気の狂っている女性に出くわしたことがあります。…(中略)…最後に乳飲み子の男の子が残って、ファシストは「空中に放りなげろ、そしたらしとめてやるから」と身振りでうながした。女の人は赤ちゃんを自分の手で地面に投げつけて殺した・・・自分の子供を・・・ファシストが撃ち殺す前に。(本文より)
2つ引用しましたがこれはごく一部で、500ページ近い分厚い文庫本の中には悲劇が山ほども書かれています。どれひとつとして同じものはありません。
第二次世界大戦での死者は8000万人に上ると言われており、今の世界でも紛争やテロでの死傷者が日々ニュースで伝えられてきますが、その被害者ひとりひとりに人生があり家族があるのだと思うと非常に悲しくなります。
戦争の被害者は統計上の数字ではない、生身の人間であると思い出させてくれる本でした。
(おわり)