【紹介】
第2次世界大戦時、アフリカ戦線においてDAK(ドイツ・アフリカ軍団)を指揮したエルヴィン・ロンメル元帥による記録。
【感想】
実は、ロンメルによるアフリカ戦線についての本はすでにあるのだが、それは完全版ではなかった。一次訳者の意図で訳されなかった部分があるというのだ。
というわけで、これが完全版(?)ということになる。
世界史上、数多くの軍人が戦ってきたわけだが、二つ名を持つ者はそう多くない。「レッド・バロン」「白い死神」「菅野デストロイヤー」等々あるが、指揮官クラスではなかなか聞かない。
第一次世界大戦で有能な前線指揮官として頭角をあらわし、第二次世界大戦では1940年のフランス侵攻作戦、1941年から43年の北アフリカ戦役で大きな功績をあげた。とくに、後者においては、巧妙な作戦・戦術により「砂漠の狐」の異名を取っている。(訳者解説より)
本書を読めばわかるのだが、ロンメルは劣悪な補給環境下でよくやっていた。味方であるイタリア軍に何度も殺されかけながら、前線を走り回って指揮をしていた。
戦争というと、日露戦争時の旅順攻略のようなガチの陣地戦や大東亜戦争時のジャングル戦をイメージしてしまうのは私だけではないはずだ。砂漠という開けた土地では戦車は思う存分機動力を発揮する。戦車にとって理想的な環境で行われた大規模な機甲戦の記録は、後世に貴重な教訓を残す(と、思う)。
純粋に読み物としても面白い。1人称の記述なので、臨場感がある。訳が新しいのでスラスラ読める。ラフな作戦図のようなものがあるので理解の助けになる。軍事の知識がないと難しい部分もあるが、そういう人はそもそもこの本を手に取らないであろうから、たぶん大丈夫だ。
(おわり)