猫兎ライフ

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最古の英雄【読書感想文】『ギルガメッシュ叙事詩』矢島文夫・訳/ちくま学芸文庫

   

 

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【紹介】

紀元前2600年頃に実在したとされるウルクの王ギルガメッシュの活躍を描いた英雄譚。

原点は粘土板に楔形文字で記されている。

【感想】

ギルガメッシュに興味を持ったのは、Fateが理由だ。圧倒的な強さにあの慢心ぶりは忘れられない。Fateを知らずとも、ギルガメッシュの名はどこかで聞いたことがあるだろう。FFシリーズにも好敵手として何度か登場していたと思う。

さて、この矢島文夫版のギルガメッシュ叙事詩はWikipediaに載るほど有名らしい。確かにこの本は学術書と呼ぶにふさわしい内容で、訳者の苦労がにじみ出ている。原典に忠実に訳した証か、欠けている部分は本書の中でも空欄になっている。さらに、欠けている部分でも他の信頼の置ける資料から内容が確からしい部分は丁寧にカッコ書きで表現されている。それでいて、読み物としての読みやすさ・分かりやすさは確保されており、翻訳経験者としては畏敬の念を禁じ得ない。現代の「英→日」訳ならば時代は一緒だし、ある程度の文化は共有しているし、なにより参考にできる資料も多い。楔形文字を和訳するためには少ない資料を元に時代の壁、文化の壁を超えなければならない。

内容的にも、方舟の記述や蛇が悪役として書かれていることから聖書へのつながりが見えるし、死者の国の記述は古事記との類似性も指摘されていた。後の人類史にも登場する普遍的なテーマが扱われていることがわかる。

他を読んだわけではないが、日本語で読めるギルガメッシュ関連本としては第一級だと思う。

 

ギルガメシュ叙事詩 (ちくま学芸文庫)

ギルガメシュ叙事詩 (ちくま学芸文庫)

 

 

(おわり)