【紹介】
ネットがまだ世間一般に広まっていない時代に凄腕ハッカーを追跡した様子を書いたノンフィクション。
【感想】
事実は小説より奇なり。わずか75セントの通信料金の差異からハッカーの存在に気付いたクリフは追跡を開始する。ハッカーは政府や軍のシステムにも侵入している慎重かつ狡猾な相手だ。最終的には政府機関を巻き込み、海の向こうにも協力者を得てハッカーの逮捕に至る。
どんなに技術が進歩しても、どこかに穴はあるし、ごまかそうとしても痕跡は残ってしまう。そしてその原因はいつも人間にある。
そもそも75セントの通信料金の差がなければ、ハッカーは気づかれることはなかった。後にはクリフが準備したダミーのファイルを読み漁るのに夢中で逆探知を許してしまっている。ハッカーの手口にしても、システム担当者が初期アカウント・パスワードを変更していなかったのを悪用したり、初期欠陥のセキュリティの穴を使用したりしている。
ハッカーに侵入されたのも、ハッカーが捕まったのも、どちらも原因は人為的なものだった。すごく教訓めいた感じになってしまうが、どんな優れたコンピュータでも使うのは人間なのだ。機械は基本的に間違えない。ドイツ軍の暗号機エニグマが解読されたのも、結局は入力する人間の癖が糸口だったはず。
コンピュータ黎明期に、主人公が手探りでハッカーを追い詰めていく様子はとても面白い。上下2巻もあっという間に読み終えてしまった。
(おわり)