猫兎ライフ

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頭のいい人の思考【読書感想文】『サピエンス全史』ユヴァル・ノア・ハラリ

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ベストセラーになっていた有名な本。ユヴァル・ノア・ハラリ著の「サピエンス全史」。サブタイトルの訳は「人類の略歴」になるはずなのだが、「文明の構造と人類の幸福」となったのはなぜだろう?

内容は、人類の歴史。

ジャレド・ダイアモンドの「銃・病原菌・鉄」が地理的条件とか家畜に適した動物の有無とか初期条件的なものに注目していたのに対し、「サピエンス全史」では虚構的なものに着眼を置いている。

とても考察に富んだ内容で、同じ歴史でも着眼が違うとまたちがった見方ができるのだと感服した。頭がいい人は同じ対象を観察しても、違ったものが見えているのだろう。

 

進化の視点に立つと、牛はこれまで登場した動物種のうちでも、屈指の成功を収めた。だが同時に、牛は地球上でも最も惨めな部類の動物に入る。(第5章 農耕がもたらした繁栄と悲劇より)

進化論では適者生存、赤の女王仮説では適者生殖が語られていた。生き残り、増えていくことは生物の進化上成功だと思っていた。だが、その考え方だと家畜をうまく説明できない。確かに数は増えて、種としての生存も保証されている。しかし、置かれている環境は惨めというほかない。幸福度のような目に見えない虚構的な着眼点の必要性が感じられた。

 

あれほどアメリカの文化や宗教や政治を憎んでいたウサマ・ビンラディンでさえ、アメリカのドルは大好きだった。(第10章 最強の征服者、貨幣より)

宗教とかイデオロギーで対立することはあっても、相手のお金までは否定しない不思議。考えてみれば、コーランを焼かれた復讐に米ドル札を焼いても良さそうなものなのに。

 

銀行が―そして経済全体が―生き残り、繁栄できるのは、私たちが将来を信頼しているからにほかならない。(第16章 拡大するパイという資本主義のマジック)

新型コロナウイルスで経済がヤバいときに、各国の中央銀行が株を買い支える理由が分かった気がした。人は経済が成長すると信用して株を買うわけで、コロナで先行き不安になれば当然売る。株が買われなければ企業の活動は立ち行かなくなり、経済全体が死んでしまう。銀行が介入して買い支えてくれるという信用があれば、多少のリスクを背負ってでも株を買う価値はあると、人は判断できる。

 

戦争で得られる利益は減少した。(第18章 国家と市場経済がもたらした世界平和)

グローバル化が進んで経済の相互依存が高まって、国家間の戦争の抑止になっていると思っていた。事態はもっと単純だったらしい。純粋に戦争が割に合わなくなっているそうだ。昔は金鉱とか、油田とか、奴隷をめぐって戦争をしていたけれど、現代の富はソフト面に移行している。下手に戦争を起こすよりも、平和に経済活動に専念した方が儲かるのだ。

 

 着眼点というかものの見方というか考察というか、とにかくすごい本。目から鱗というのかな?

ホモ・デウスも買ったので、読むよ。

(おわり)