猫兎ライフ

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常識では信じられない犯罪者の正体【読書感想文】『ケーキの切れない非行少年たち』宮口幸治著/新潮新書

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ちょっと前にツイッターでバズって気になっていた本がある。『ケーキの切れない非行少年たち』だ。

世の中には常識では信じられない犯罪者がいる。新幹線の中で鉈で乗客を切り殺した奴とか、高速道路で煽り運転をして夫婦を殺した奴とか、最近では渋谷でホームレスを撲殺した奴とか。児童への性犯罪を繰り返す奴もいる。

頭がおかしいんじゃないかと思っていたが、どうやら本当にそうらしい。「おかしい」というのは語弊があるかもしれないが、少なくとも正常ではなさそうなのだ。

児童精神科医である筆者は、多くの非行少年たちと出会う中で、「反省以前の子ども」が沢山いるという事実に気づく。少年院には、認知力が弱く、「ケーキを等分に切る」ことすら出来ない非行少年が大勢いたが、……(カバー折り返しより)

少年院には、認知能力が弱い非行少年が大勢いたという。ケーキを3等分、5等分にするように言ってもいびつな切り方をする。複雑な図形を書き写すよう指示しても、ちゃんと書けない。世の中の見かた自体が歪んでいるのだ。

日常生活においては、何気ない会話を悪口だと感じてしまったりする。お金が欲しいと思えば、「稼ぐ」も「盗む」も同列の選択として挙がってしまう。盗めば相手が困るとか、自分が逮捕されるとか、そこまで考えることができない。殺した相手の家族の手記を読んでも難しくて理解できず、反省すらすることができない。反省「しない」のではなく、「できない」のだ。

認知自体が歪んでいるならば、信じられないような犯罪行為にも納得できる。常識とか、普通の感覚というものが通じない存在なのだから。

……IQ70~84のかつての軽度知的障害者は14%もいたという計算になります。(第5章より)

知的障害とは認められなくても、生きづらさを感じている人は相当数いるのだろう。障害者とは診断されないから普通の学校に行くことになる。授業についていけなければ劣等感を感じることになるし、いじめの対象にもなりやすいだろう。慢性的なストレスは、犯罪への引き金になりやすい。

 

犯罪のニュースを聞くたびに、「全員死刑でおk」とか思ってたけれど、ことはそんなに簡単ではないらしい。そもそも犯罪を悪いことと思えず、反省することもできない層が存在するのだ。例え犯罪の厳罰化をしても抑止にはならないし、普通の更生プログラムを受けさせても改善は見込めない。

著者は、認知機能のトレーニング(コグトレ)を推奨している。

育児とか教育に携わる人はぜひ読んだ方が良い本だと思う。

(おわり)