猫兎ライフ

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僕ヤバのヤバさを語る。【読書感想文】『僕の心のヤバイやつ』桜井のりお

※注意※

ネタバレというか、作品の内容に触れることになる。記事の性質上しゃーない。引用はなるべくオープンソースから引っ張るようにした。本編を読む楽しみを奪わないよう、善処する。

あと文章キモいから注意して(ニチャア)

【僕ヤバとは?】

 

最近、僕ヤバにどハマりしている。僕ヤバとは、「僕の心のヤバイやつ」の略だ。「みつどもえ」とか「ロロッロ!」を描いている桜井のりお先生の漫画。

 

陽キャが憎くてたまらない…。
只今、中二病真っ最中の市川京太郎は、
学園カースト頂点の美少女・山田杏奈の殺害を企む!
だが、山田の意外な一面を知ってしまい…!?(マンガクロスHPより)

 

陰キャ男子と陽キャ女子のラブコメ。なんだかよくありそうな設定だけど、この漫画は本当にヤバいんだ。30過ぎのおっさん(俺)がラブコメにハマってるのもヤバイし、繰り返し10周以上読んでるんだからもう末期のヤバさ。この記事の参考にと少しだけ見るつもりで開いた1巻を勢いそのまま読み切ってしまって、現在11周目。それも読み切って今12週目だぞ!あっ、12周目読み終わっちゃった。伝われ、このヤバさ…。

この作品には言葉では語りつくせない魅力があるのだが、もう我慢できないので僕ヤバのヤバさについて語るぜ。

【僕ヤバの魅力】

〈読者を引き込むテンポの良さ〉

なんかネットとかで人気になっているマンガがあるらしい。その名も「僕の心のヤバイやつ」。略して、僕ヤバ。ふーん。確かに女の子の絵柄は可愛いけどね。ラブコメねぇ。俺は「BLAM!」とか「HELLSING」とか「ドロヘドロ」とか「redEyes」みたいな血飛沫飛び交う硬派な漫画が好きなの!チャラついたマンガが流行るなんて世も末だぜ。

そんなふうに考えていた時期が、俺にもありました。

批判するつもりで試しに1巻を買って読み始めたら、まるまる一気読みしてしまった。

「僕は頭がおかしい」。中二病全開のモノローグから物語は始まる。あー…、そういう感じ?ひねくれた主人公を前面に押し出す感じ?

期待せずにページをめくっていったら、はや4ページ目にして特大のおにぎりを頬張るヒロイン。え?なんなん?なんなんだこのマンガは?展開急過ぎじゃない?てかそっち方向に展開する?

話のテンポがめちゃ良いのよこのマンガ。流石、ギャグ漫画出身の作者。こんな感じで、ちょっとした絡みとかちょいエロとか挟んだりしながらダラダラ続くのかと思いきや、そうではない。日常のちょっとした出来事の積み重ねで、二人の関係は変化していく。1話ごとのテンポも良いし、ストーリー展開のテンポも良い。とりあえず1巻読んでみてほしいなぁ。6話まで無料公開されてるけど、1巻のラストは特にヤバいからなぁ。ぜひ買って読もう!(ダイレクトマーケティング)

mangacross.jp

 

〈ご都合主義のない、ゆっくりとした進展〉

前述したテンポの良さに反し、市川と山田の関係の進展自体は極めて緩やか。 最近の極甘展開を読んでると忘れがちだが、市川が自分の気持ちに気付くまで1巻を要しているし(第1巻参照)、LINE交換するのかと思いきや、実際に交換するまでこれまた1巻かかっている(第3巻参照)。

ご都合主義のないゆっくりとした進展も、このマンガの魅力だよね。創作である以上、全ては作者のご都合ではあるのだが。「そうはならんやろ」って展開が無い。無いように見える。それだけ丁寧に話が進む。

なんの脈絡もなく可愛い女子からなぜか急に好意を寄せられる系の話ではない。むしろ逆に、小さなことの積み重ねで関係を深めていく市川と山田の成長譚だ。ラブコメであると同時に、王道のビルドゥングスロマンであるという点も人気の理由ではないだろうか。

そもそも、陰キャが女子といきなり仲良くなれるわけないじゃん?てか話すらまともにできるわけないじゃん?今あらためて読み返してみたら、市川が山田と普通に話せるようになるのかなり後だったわ。雨の日に傘忘れイベントが発生するかと思いきや市川は無様なカッパだし、席替えで運良く隣になったりもしない。よくよく考えれば最新話時点でも、お互い下の名前で呼んですらいないしな。

”現実(リアル)”ってそういうもんだろ…。

 

〈格差ラブコメじゃない、キャラの魅力〉

登場するキャラクターも良いよね。全員良い。家族は仲良さそうだし、クラスメイトは面白いし。特にチョロいばやしこが無限にかわいい。

閑話休題。

閑話休題を「それはさておき」って読ませるのカッコいいよね。

閑話休題。

ヒロインの山田は文句なしに最高。明るくて、まっすぐで、かわいい。ちょっと抜けてる感じとか、ぐいぐいくる感じとか、ヤバい。

山田も良いんだが、俺の一番の推しは市川だね。

市川はただの陰キャじゃないんだ。すげー気配りできるし、やさいしい。漢気もある。文化祭のときは自分を悪者にしてクラスメイトを庇おうとしたし、泣いてる山田のためにティッシュをこっそり(?)置いておいてあげたり。

僕ヤバは、山田が上で市川が下みたいな単なる一方的な格差ラブコメじゃない。最初にアクションをかけたのは市川だったはず。第1話でカッター貸してあげたでしょ?些細なことだけど。でも、こういう市川のちょっとした親切とか気配りがあったからこそ、今の関係があるんだと思う。決して受け身の棚ぼたではない。

ぐいぐいくる山田も、市川がらみのことだと挙動がキモくなったりする。そこがまたかわいい。市川も無意識というか不意にイケメンな行動とか言動をするので油断できない。そういうところだぞ市川ぁ。

 

〈安易に脱がない洗練されたエロさ〉

このマンガ、安直なエロさが無い。呼吸をするように脱ぐキャラがいたロロッロとは大違い。俺の記憶が正しければ、パンチラは1回も無かったはず。スパッツ履いてる設定だよね?。偶然ベッドに押し倒しちゃったからって、その流れでキスなんかしないし。

そういう安っぽいエロはないけど、それ以上のものがある。

第2巻に収録されているKarte.22に傘忘れ回がある。色々あって、市川がカッパを着た山田のカーディガンのポケットに財布を入れてあげることになるんだけど、そのシーンがまたエロいんだ!!

カッパのボタンを2つ外して、そこから手を入れて、カーディガンのポケットに財布を入れる。

 

ただそれだけなのに、こんなのもうセ○クスじゃん!いやセッ○スよりエロい!!!このためだけに1ページ使ってるからね。作者分かってるわ~。ちなみに俺は、この傘忘れ回が1番好き。

あと、ラッキースケベも洗練されている。現時点最新話のKarte.65「僕は大人のなりかけ」では、二人の距離が近くなって偶然胸に手ガーっていうベタな展開がある。よくありそうな状況だけど、僕ヤバは一味も二味も違う。市川の骨折から回復した腕をニギニギしながら山田が距離を詰めるんだけど、市川は山田に触れないように手を握って縮めてる。分かるかな?最初は手のひらを開き気味なんだけど、山田が近づいてくるから手を握って触れないようにしている。さすが気配りの市川。

それでも山田は距離が近いから触れてしまう。その触れ方が、鷲掴みとかではなく、脇にこうスッと手が入る感じ?になっている。胸自体には触ってないようだけど。これは最高にエロいぞ!!!鷲掴みの数倍…いや数十倍はエロい!!!!作者天才か!!!!!性癖どストライク!!!!!!

鷲掴みならそれで終わりだけど、この状態からならいくらでも派生ができるからな!そのまま後ろに手を回して抱き寄せてヨシ!もちろん前に持ってくるもヨシ!身体に沿って下に手を這わせてもヨシ!片手で身体を支えてあげながらもう片方の手で顔とか髪を愛でるのもヨシ!可能性は無限大!!!(ニチャア)

あとこれKarte.37で黒板に描いてた、触ったらころすゾーンなんだよね。もろに。それなのに山田は市川に指摘されるまで触れられてることに気付いてない感じだった。これだけパーソナルスペースに立ち入られても大丈夫ということは、答えは一つだね。

バッチコイだよ!!

 

ちなみに作者のTwitterでは直球でエロい感じの絵とかアップされてるから、ぜひフォローしよう(ダイレクトマーケティング)。公式サイトとか単行本未収録のマンガもあるよ。イベントとかに合わせて色々アップしてくれてるよ。公式が最大手。マジ神。桜井のりお@僕ヤバ④2/8発売 ロ⑦発売中 (@lovely_pig328) | Twitter

 

〈細部が特にヤバい〉

このマンガは全部ヤバいんだけど、細かい描写は特にヤバい。上でラッキースケベのシーンについてキモく語ったけど、手先指先の動きにも意味があるんだ。小さなコマのキャラの表情にも。もっと言ってしまえば、目尻とか口角の上がり下がり、視線の向きとか。登場する小物とか、些細なやり取りにも意味が込められている。

これはネタバレしちゃったら読む楽しみが減っちゃうからな。自分で読んで、これはもしや?ってニヤニヤするのが良いんだよ。みんなでキモくなってニヤニヤしよう(ニチャア)。

俺が僕ヤバを12周もしているのは、細部を読む楽しさがあるのも大きいと思う。だっていまだに読むたびに新たな発見があるんだもん。12周目でだよ?ヤベーよこのマンガ。本当にヤバい。この記事書き始めてから2周しちゃったからね。全然筆が進まん。

 

〈設定がシンプル〉

設定がシンプルなのも良いね。物語の設定。なにかすごい設定があるのではなく、特殊な設定が無いのが。中学校に通う陰キャと陽キャ。基本それだけ。

時をかけることはないし、入れ替わりもしないし、隕石は落ちてこないし、最終兵器にもならないし、余命宣告もされないし、異世界転生もしないし、剣も魔法も召喚獣もないし、財閥の御曹子も出てこないし、怪異に出会うこともないし、霊能力者も出てこないし、ロボットも出てこないし、三つ子も今のところ登場しない。

安易な鬱設定、胸糞展開が無いのも良い。家庭崩壊してるとか、クラスでいじめがあるとか、犯罪に巻き込まれるとか、そういうのが無い。

強制的に二人の関係を縮めて話を進めるデウス・エクス・マキナは存在しない。

シンプルな設定だからこそ、漫画としての地力が試される。そしてこの面白さ。この人気ぶりよ。作者があとがきで書いていた「距離」「変化」「気付き」がより引き立たつ。

本当にねぇ、この漫画はねぇ、距離感とか小さな変化とかが良いのよ。余計な要素抜きで純粋にそれを楽しめるのはマジで素晴らしい。

 

〈経験に裏打ちされた漫画力〉

シンプルな設定でこれだけ面白く読ませてくれるのは、ひとえに作者の実力に依ると思われる。漫画のずぶの素人がこんなことを言うのは非常に憚られるのだが、桜井のりお先生、漫画描くの上手過ぎじゃないか?

コマ割りって言うの?コマの配置というか。すごい読みやすい。小さいコマも多いんだけど、スラスラ読めるようになってる。これ多分読み手の視線の動きとか、ひとコマ読むのにかかる時間とかちゃんと考えて構成されてるんだろうな。流れるような展開からの決めゴマとかもう最高。Karte.30「僕は溶かした」、オススメだよ。

コマの情報量のバランスも良い。さっき細部がヤバいと書いたが、決してごやごちゃはしていない。描き込みが甘いとかそういうことを言いたいんじゃない。見せたいものを描きつつ、余計なものを削ってる感じ。情報の取捨選択というか。そのコマで伝えたいであろうことが、すんなりと入ってくる。状況が分かりやすい。

あと作画も素晴らしい。キャラデザが最高に可愛いのは言うに及ばず。なんというか、画がみやすい。これは俺の知識不足でうまく言語化できないんだけど。線がはっきりしてるし。若干デフォルメ入ってる感じはするけど、身体の構造とかは端折られてないから、体勢とか動きとか分かりやすいし。服のシワの入れ具合も、なんか良い(小並)。

素人では到底分からないような、技巧の粋が尽くされているんだと思う。

あと「間」ね。間が良い。セリフとか動きが無いシーンの描き方がすごい。例えば、アクシデントで市川が山田をベッドに押し倒したみたいになっちゃうシーン。これは4巻の宣材画像にもなってるから、ちょっとはネタバレセーフでしょ。偶然押し倒したみたいな形になったからって、何が起こるわけでもない。わけではないが!何も起こらなかったこの「間」が非常に良い!!お互い目が合いつつも動けなかったこの間がッ!!!キスとかするには十分すぎる間だったんじゃないかな、市川くん?山田がすぐに拒否らなかったということは、答えは一つだね。

バッチコイだよ!!

あと職業見学の時にエレベーター降りる時の間も最高だったな。

〈連載漫画という形式がベスト〉

これはまあ、非常に個人的な見解なんだけど。僕ヤバは、今の連載漫画という形式がベストなんじゃないかと思う。しかも未完結で連載継続中という。実際の人間関係と同じで、先が見えていない。先が見えないからこその面白さがある。完結した1冊の小説とか1本の映画とかだったら、ここまで引き込まれることはなかったんじゃないかな。

あと更新ペースがゆっくりなのも良いね。隔週くらいか。これはじっくり楽しむものだから、毎週更新じゃなくていい。確かに続きは気になるけれど、結末に近づいて欲しくはない。ジレンマだ。あと作者にはご自愛専一して欲しいから、無理のないペースで連載してほしい。正直このマンガは月1とかでも十分やっていけるから大丈夫だよ。

僕ヤバと同時代を生きて、リアルタイムで読むことができて本当に幸せだなと思う。

 

【至高の領域】

このマンガを読んでて思ったことがある。

達人の剣技に似てない?いや達人の剣技なんて見たことないんだけども。

一切の無駄がなく。派手さはないがひとコマひとコマが的確で致命的で。テンポは流れる水の様に流麗で、展開には独特の緩急がある。

このマンガ練り上げられている。

極限まで練り上げられたマンガの完成形…

猗窩座もニッコリの至高の領域だ。

いやマジで俺は、作者は神か悪魔か、はたまた鬼・妖怪の類では無いかと割と本気で思ってる。

僕ヤバ読み始めてから、脳内麻薬ドバドバ出てる感じするもんね。仕事が全然苦にならないし、僕ヤバのことを考えてたらすぐ定時になる(仕事しろ)

尊さに脳が焼かれたんだと思う。

それほどヤバいぞ、僕ヤバは。

みんな買って読もう!(ダイレクトマーケティング)

僕の心のヤバイやつ 1 (少年チャンピオン・コミックス)

僕の心のヤバイやつ 2 (少年チャンピオン・コミックス)

僕の心のヤバイやつ 3 (少年チャンピオン・コミックス)

僕の心のヤバイやつ 4 (4) (少年チャンピオン・コミックス)

Kindleのプレゼントコードとか貼れたら10冊分くらい貼っておくんだけど。日本のAmazonじゃ対応してないらしい。だからみんな自腹で買おう。

本当はもっと書きたいことが沢山あるけど、僕ヤバの魅力はキリがないからこれぐらいにする。

(おわり)