猫兎ライフ

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「はじめまして、って言えばいいんだよ」【読書感想文】あこがれ/川上未映子/新潮社

   

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【紹介】

『乳と卵』で芥川賞を受賞した作家、川上未映子さんの著書です。2015年10月20日発行なので、比較的新しい本です。

 

あこがれ

あこがれ

 

 

【感想】

川上未映子さんの本は、以前『きみは赤ちゃん』を読んだことがあります。詩的な文章が素敵な作家さんです。書店でサイン本を見かけたので購入しました。

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「川」の字の棒と棒の間に、赤と緑のドットが打たれていて、顔みたいになっていて非常に可愛いサインです。

 

「あこがれ」は、小学生の男女を中心とした物語です。小学生がここまでいろいろ考えるかな?とも思いましたが、もはや小学生時代の記憶は無いのでなんとも言えません。

 

そうだよ、だれかにあしたまた会えるのは、会いつづけているからに決まってるじゃん。…(ヘガティー・本文より)

「簡単なことを言っているようで実は深い」みたいな文章が沢山あります。この文は、何気無い日常の儚さをよく表しています。例えば、発電所の職員が一斉にストライキを起こしたら、このMacも動かないし、電話会社の人が頑張って仕事をしているからiPhoneもつながる。いつも職場や学校であっている人も、病欠すれば顔をあわせることはできないし、不慮の事故で永遠に会えなくなってしまう可能性もあります。

 

だいたい組体操じたいがナンセンスなんだよ。だから誰かがさ、組体操じたいが取りやめになるくらいの大きなケガでもするしかないの。そうしないと大人ってわからないんだよ、わたしたちが何を考えているかとか、何がいやで、どんな気持ちでいるかなんて。(チグリス・本文より)

最近話題の組体操(人間ピラミッド)に関する記述もあります。未来の人間がこの本を読んだ時、「こんな野蛮なことをやっていた時代があったのか」と驚くでしょう。こういった小説が、同時代の文化を知る一番の手がかりになると思います。

 

こんな感じで、詩的な文章やドキッとさせられるような文章が綴られています。主人公の2人がまだ小学生というのも大きな特徴だと思います。登場人物が思春期を過ぎていると、どうしても色恋系の話になってしまいます。小学生ならば心理描写にも邪念が入りません。この本でも主人公2人の頭の中はどこまでも真っ直ぐでピュアです。ついつい応援したくなってしまいます。

(おわり)

 

あこがれ

あこがれ