猫兎ライフ

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戦後70年が過ぎましたが・・・【読書感想文】『あの戦争と日本人』半藤一利/文春文庫

   

 

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【紹介】

昭和史」や「日露戦争史」で有名な半藤一利さんの本です。

 

あの戦争と日本人 (文春文庫)

あの戦争と日本人 (文春文庫)

 

 

【感想】

半藤一利さんの本を読むのは初めてです。書店に行けば必ず目にする半藤さんの本ですが、これまでは読む機会に巡り合いませんでした。2015年で「あの戦争」終戦から70周年ということもあり、読んでみようと思い手に取りました。安全保障法制の改正、SEALDsに代表される学生運動の高まり、強力な政権与党、選挙権年齢の引き下げなどなど、今の日本も激動の時代にあるのではないのでしょうか。いまいちど冷静に先の戦争から学ぶべきことがあるのではないかと思う今日この頃です。

 

後世が目にする文献や資料は、活字になるという時点ですでに取捨選択されている。すなわち、ほぼ勝者によって取捨選択された歴史が活字になっているんです。(本文より)

歴史が勝者によって取捨選択された記録だというのはよく聞くことですが、それが日本にも当てはまるとは今まで考えたこともありませんでした。ですが、日本も明治維新とそれに続く西南戦争という大きな内戦を経て近代国家への道を歩み始めました。勝者による情報の取捨選択があっても何ら不思議はありません。明治政府の要人もほとんどは薩長出身者で占められていたのですから。

このような「疑って」みる日本史観というのは初めてで新鮮でした。司馬遼太郎さんの「坂の上の雲」で書かれているような華々しい偉人たちの活躍も、必ずしも全てが真実ではないのかもしれません。

…旅順要塞攻撃自体が無効だったというわけなんですね。(本文より)

 

日本が戦争に走った理由は、統帥権の濫用による軍部の暴走だけが原因ではないことがわかります。明治のうちはうまくいっていたものが、時間だ経つにつれてだんだんとかみ合わなくなって、戦争に突入したのだと思います。歴史は断絶などしてはいません。「先の戦争は軍部の暴走が原因だ」と決めつけていては何も学べません。

日本の近代史、特に太平洋戦争(大東亜戦争)のあたりは非常に複雑で、頭が痛くなる部分です。何度勉強し直しても、日米開戦の必要性というか理由というかを明確に理解することができません。それだけ複雑だということなのでしょう。(あるいは私の理解力が低いだけか。)東京裁判において石原莞爾がペルリ(ペリー提督)を呼んでこいと言ったのもあながち的外れではないのかもしれません。

 

ともかく、学び続ける姿勢が大事です。できるだけ多角的に。教科書だけでなく、司馬遼太郎だけでなく、半藤一利だけでなく。「歴史」というと固定された、絶対的な、過去の事実だというふうに錯覚しがちですがそうではありません。過去の出来事のいち側面に過ぎません。鎌倉幕府の成立が1192年だと思いきや実は1185年だった、というのが良い例です。

(おわり)