【紹介】
人間酷似型ロボットの第一人者、石黒浩さんの著書です。「マツコロイド」「テレノイド」などで有名な人です。
【感想】
この人が、アンドロイドの研究をする理由は「人の気持ちを考える」ためだそうです。そして「人の気持ちを考える」ため、AIだけではなく、体を持ったロボットの研究をしているのだそうです。
ロボットはもはや人間と遜色ない存在になりつつある。どころか、人間以上の価値を持つ場面も増えている。そうした事態が、逆説的に「人間固有の価値とは何か」「人間にしかできないことはなんなのか」という本質をあぶりだすのである。(本文より)
人を知るためにアンドロイドを作り、アンドロイドが人間に近づくほどに人間固有の価値が明らかになる。まさに天才的な考えです。
著者は、人間国宝の落語家のアンドロイドも作っています。米朝アンドロイドです。後継者がいない伝統芸能も、アンドロイドならば完全な形で次世代に残すことができます。そして意外なことに、アンドロイドの落語を味気ないと思う人はいないのだそうです。
毎回寸分の狂いなく正確に再現されることをもって「味気ない」と言っているのであれば、プログラムによってゆらぎや不確実性を持たせ、ミスやためらいに見える動作を表現すれば、そういうひとたちが考えている程度の「人間っぽさ」は、簡単に再現できてしまう。(本文より)
近年のAIの進化には目覚しいものがあります。チェス、囲碁、将棋ではいずれ全ての手が解明され、人間がAIに勝つのは不可能になるでしょう。現代でも、新聞記事を作成するAIというものがあるらしく、イギリスだかで記者が解雇されたというニュースをニュースをみたことがあります。AIやコンピューターが進化するほど、「人間にしかできないこと」に世の中はシフトして行っている気がします。「〜アドバイザー」とか「〜コーディネーター」とか「〜コンサルタント」などは、現代だから成り立っている仕事であって、石器時代では存在し得なかったであろう職業です。人の労働の多くが機械に成り代わられることで、人にしかできないことが浮き彫りになっているのだと思います。
アンドロイドは、テクノロジーの究極形のひとつだと思います。タイトルにあるように、アンドロイドが人間のようになった時「人間とはなにか?」「人間の価値は?」といった、古来からある哲学的命題への答えが出るのではないかと思います。
(おわり)