【紹介】
スーパーホテルについて書かれているビジネス書です。
稼働率89%、リピート率70% 顧客がキャンセル待ちするホテルで行われていること―スーパーホテルが目指す「一円あたりの顧客満足日本一」とは?
- 作者: 峰如之介
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2010/10/29
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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【感想】
スーパーホテルに泊まったことのある人ならわかると思いますが、あそこは超低価格にもかかわらず施設は綺麗で掃除は行き届いており寝具のクオリティも非常に高いホテルです。この本には、スーパーホテルが低価格で質の高いサービスを提供している方法について書かれています。
スーパーホテルの大きな特徴は、宿泊料金の安さにあります。
「安いと感じるのは、1泊5000円以下じゃないと」(現場スタッフ/本文より)
バブル崩壊を受けて5000円以下の価格設定にしたらしいのですが、スーパーホテルはこれを「絞り込み」によって成し遂げていました。宿泊に特化し、会議室などの余計な施設を廃止し、自動チェックイン機で「ノーキー・ノーチェックアウト」でオペレーションすることで人件費も抑えています。
しかし、安いだけではリピート客は生まれません。宿泊客がリピートしたくなる高品質のサービスは、徹底した教育によってなされています。ベンチャー支配人というシステムをとり、まず研修を行い、営業中のホテルは定期的にサービスチェックを行い改善すべき点は出来るようになるまで指導を行います。この「人材育成」と「できるようになるまでやらせる」というのが意外に難しいことで、コストや手間がかかるのでどうしてもないがしろにしてしまいがちです。
この本には今後にビジネスに参考にできそうな点がいくつかありました。まず1つがテクノロジーとの付き合い方です。スーパーホテルではチェックインなどの機械でこなせるところは自動化し、サービスの向上という人にしかできないところに人間の労力を集中させています。最近AIや自動運転の技術が向上していますが大事なのはそれら自体ではなく、その結果として人間が何を出来るようになるかが重要だと思います。
もうひとつが企業体質です。いまやインターネットが発達し、良い情報も悪い情報も瞬く間に広まります。ブラックな企業体質ではあっというまに晒されて評判は下がります。スーパーホテルでは環境への取り組みもしっかり行っていますし、ベンチャー支配人というシステムでは業務は大変である反面、数年間で起業資金を貯めることができるほどの見返りがあり、契約期間終了後は独立することができます。普通なら手間暇かけて育成した従業員は手放したくないものですが、それを気前良く行なっています。こうした後ろ指をさされないような姿勢が、企業を長続きさせるために必要な時代になってきていると思います。ズルをしたり、企業が負うべきコストを従業員に負担させているようではすぐに悪評が広まります。
久しぶりに読んだビジネス書ですが、なかなか面白かったです。
(おわり)