猫兎ライフ

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【読書感想文】『ルワンダ中央銀行総裁日記』服部正也著

 

これは、アフリカ中央の小国ルワンダの中央銀行総裁として勤めた六年間の記録である。(まえがきより)

日本人がルワンダの中央銀行の総裁として勤務した際の記録。自伝的な本。

1965年のアフリカだから相当に貧しかっただろう。服部さんが頑張って、なんやかんやで色々あって、経済は良い方向へ向かっていく。

この本を読んで思ったのが、組織のトップに立つ人間は専門家でなければならないなということだ。既得権益を守るために適当なことを言う人や、慣習から抜け出せない人と対峙するには、専門知識に裏打ちされた信念が必要だ。ルワンダでの活躍を読むに、経済に関しては服部氏の右に出るものなしだった。確かな根拠があるから改革も進められる。

台湾では理系出身や医学部出身の大臣が多いと聞いた。そのおかげか、新型コロナウイルス対応では迅速かつ効果的な対策で封じ込めに成功している。

日本の省庁のトップにも、もっと理系出身者とか専門家が多くなれば良いよね。

アフリカの国が経済的に発展するなんて無理だ、なんていう先入観がかつて俺にもあった。だが、日本だって少し昔までは東の果ての遅れた黄色人種の小さな島国だったのだ。人種だったり、資源的不利だったりが関係ないということは日本が証明している。

だがそれと同時に、民族性というのは大きな壁になるとも思う。軌道に乗り始めたルワンダの経済は、1994年の大虐殺により壊滅的な打撃を受けたという。50万~100万人が虐殺された。アフガニスタンの民主主義政権がイスラム原理主義組織のタリバンによってあっけなく倒されてしまったのは記憶に新しい。欧米の価値観である自由や民主主義に基づく成長は、アフリカ・中央アジア・中東の国とは相性が悪そうだ。なんらかのローカライズが必要なのではないかと思う。

(おわり)