猫兎ライフ

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不眠はうつのもと【読書感想文】『[新版]精神科治療の覚書』中井久夫/

   

 

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【紹介】

精神科医である中井久夫さんの著書です。

 

新版・精神科治療の覚書 (日本評論社ベーシック・シリーズ)

新版・精神科治療の覚書 (日本評論社ベーシック・シリーズ)

 

 

【感想】

この本は、以前読んだ最相葉月さんの「セラピスト」で紹介されていた本だったと思います。(「セラピスト」で紹介されていた河合隼雄さんの本で、また紹介されていた本だったかもしれません。)

精神科医の書いたエッセイのような内容でした。専門用語は出てきますが、医療の知識がない私でも読むことはできました。専門家が読んだら、もっとためになる本だと思います。

日常生活でも参考にできるような内容もありました。

不眠は、分裂病の前駆症状に限らない。むしろ、不眠という一般的な事態があって、その人の脆さのあり方にしたがって、うつ病が出たり、てんかん発作が起こったりするのだろう。(本文より)

睡眠不足は、本当に良くないです。深夜の残業や徹夜を経験したことのある人はわかると思いますが、寝不足になると集中力が続かなくなります。頭がぼーっとして、思考がまとまらなくなります。睡眠が足りないと、悪影響があるというのは、専門家の見地からしても確かなようです。

 

人間が社会に合わせるべきか、社会が人間に合わせるべきか、はいつも問題になるが、社会が人間に要求するところは無限、人間の力は有限だから、ある点をこえて社会に合わせてゆこうとすれば人間は必ず破滅するだろう。(本文より)

資本主義により、経済の規模は拡大し続けます。それにともない、社会も変化し続けます。そんなものに、生身の体で付き合い続けていたら、人間の方が破綻するのは当然の摂理です。特に日本は、明治維新や戦後の急成長があり、めまぐるしく変化しています。しわ寄せが弱い人間に行くのもうなずけます。

 

医学の第一原則は「まず害するなかれ」である。(本文より)

まさに「生兵法は怪我のもと」です。精神疾患の場合、患者を無理に朝叩き起こしたり、マラソンをさせたりするのはNGだそうです。この他にも、家族が患者と接する際に参考になりそうな内容もありました。

 

発病前の生き方に無理があったからこそ病気になったと考えれば、そこに戻るような動きを患者が避けても、あるいは、患者の生命がそれを抑えても、それは健康な、生命保護的なものではあるまいか。(本文より)

精神疾患というのは、原因があってなるのではなく、目的があってなるのだと、どこかで聞いたおぼえがあります。アドラー心理学だったか、ホメオスタシスだったか、他の何かだったか忘れましたが。これには、考えさせられます。例えば、仕事の環境が悪くてうつ病になった場合、「このままだと体が持たない」と心のどこかで判断してうつになったと考えると、病気との付き合い方も変わってくるのではないかと思います。

 

 精神科治療の話というのは、普段なかなか目にすることはないので、興味深く読むことができました。

(おわり)