【紹介】
イスラムの思想の歴史の本です。
【感想】
難しすぎてほとんど内容が頭に入ってきませんでしたが、少しだけ収穫はありました。
イスラーム思想史という本なので、当然思想家たるアラビア人が登場するのですが、名前がなじみのないものばかりで、慣れませんでした。また、ギリシア哲学に触れる記述もあり、ソクラテスもプラトンもアリストテレスも読んだことのない私には難しい内容でした。ある程度の哲学素養を持った人向けの本だと感じました。
内容は難しかったですが、イスラムの文化を理解する上で参考にできそうな部分もありました。
沙漠に移り歩くベドウィン達は、「眼光射る如く、常に耳そばだて」ている男を理想とした。(本文より)
和辻哲郎さんの「風土」にもありましたが、人は住む土地の気候により少なからず影響を受けます。沙漠に住む民は、水や嵐、迫り来る敵の兆候を察知する必要があるため、五感を大切にする文化となったのでしょう。そしてそれは、イスラム教のコーランにも影響を及ぼしています。
コーランは翻訳で見ると実に冗漫で読むに堪えないが……アラビア語で読むと、決してつまらぬ本ではない。(本文より)
コーランは、アラビア語のものだけが正文だとされています。その理由もここにあるのでしょう。以前、コーランの日本語訳をちらっと読んだことがありますが、微塵も面白さを感じませんでした。しかし、アラビア語で朗読されるコーランには、音楽的な美しささえあります。元々、コーランには「朗読されるもの」という意味があるそうです。
↑youtubeで見つけたコーランの朗読です。聞いていると、アラビアンナイトのような、沙漠の情景が目の前に広がるようです。
このように、コーランは論理ではなく感覚の書なのです。
かくて、コーランは論理的に見れば矛盾に満ちている。…(中略)…しかしながら、コーランを論理的に組織立てしようとする試みは、むしろ本来のコーランの精神に合致しないのである。(本文より)
聖典たるコーランからして論理的矛盾を抱えていては、イスラムの諸派が対立するのも、論理で成り立っている西欧社会と馴染まないのも、当然だといえます。イスラムの起源からして、沙漠の民の感覚的なものだという認識があれば、イスラムへの理解も深まるのではないかと感じました。
(おわり)