モテ=ヒットレシオ×試行回数(オビより)
【紹介】
ネットで話題騒然の「恋愛工学」の全貌がはじめて明らかに!(オビより)
少し前に話題になった「恋愛工学」の本です。言ってしまえば、ナンパの本です。著者は、投資家であり作家である藤沢和希さんです。「週刊金融日記」というメールマガジンも発行している人です。
【感想】
オーソドックスな構成のナンパの本です。全くの若輩者である主人公が、メンターとの出会いを契機に成長していく話です。自己啓発本なんかではよく見かける構成です。この本はフィクションでで、ノンフィクションのナンパ本「ザ・ゲーム」とは対照的ですが、その分わかりやすく丁寧な話の進み方になっています。
ナンパというと下世話なイメージを抱きがちですが、恋愛工学は進化生物学や心理学、金融工学のリスクマネジメントの技法が取り入れられているそうで、ロジックは極めて淡々と理路整然としています。
「ダメだ」
「なぜですか?」
「人の善意につけ込むやり方だからだ」(本文より)
また上の会話が示すように一定の倫理観というものがあるようで、「人に迷惑をかけない」というのが基本スタンスになっているようです。
「お前もふくめて、多くのモテない男が、無視したり、ひどいことを言ったりする若い女のことをビッチと呼ぶ。本当は自分が相手にされないからムカついているだけなんだが。世の中にビッチなんて存在しないんだ。彼女たちは、じつは、シャイだったり自信がなかったりするだけで、心をいったん開いてやれば、一途でとても優しかったりするもんだ。だから、これからは誰もビッチと言うんじゃない。わかったな」(本文より)
上のセリフは長い引用になってしまいましたが、重要なことを言っているように感じます。モテない男は女性のことをひどく扱ったり、まともに相手をしてもらえないからストーカー化したり、慣れないからちょっとしたこと(部屋に呼ばれた等)で勘違いしてしまったりする傾向があるのではないかと思います。世の中の男女間の微妙な問題の原因の一つが、この非モテ男の振る舞いだと思います。
こうして世代を重ねるごとに、チャンスがあってもセックスしない、できない男の遺伝子はどんどん数を減らし、セックスのことばかり考えている男の遺伝子は、たくさんの子供を通して増殖していくわけだ。(本文より)
ナンパの本だからといって馬鹿にしている場合ではありません。オスは、メスに認められなければ子孫を残すことはできません。メスに気に入られるため、猿は熾烈なボス争いをし、鳥はきれいな羽で着飾り時には歌って踊り、百獣の王は獲物を献上します。女性の口説き方は、ひょっとしたら学校の勉強の何倍も大切なことなのかもしれません。ぼやぼやしていると、自然淘汰されてしまいます。「男における不妊とは、女に選ばれないこと」って、誰か偉い人が言ってましたよね?
結局のところ、女にモテるかどうかって、ビールを一杯飲み干したあとに、臆面もなく『セックスさせてくれ』と言えるかどうかなんだよ。(本文より)
ここまでダイレクトではなくても、相手に興味があることを伝えるのは重要だと思います。全くそういったそぶりを見せずに、女性の部屋に招かれたからといって襲ったら、そりゃあ通報されます。
以上、引用を交えながら感想を書きましたが非常に面白く参考になる本です。恋愛を極端に神聖視する人が読むと、苦情がきそうな内容ですがロジック的にはこの本に軍配が上がります。読まず嫌いはぜずに、読んでみる価値のある本です。
この本はモテない人ほど読むべきです。ナチュラルボーンに女性を口説けるような人は、放っておいても子孫を残せるかもしれませんが、非モテはその代で遺伝子のリレーが途絶えてしまう可能性もあるのです。恋や愛が工学として学習可能であるというのは、希望です。「同じクラスになって」や「同じ職場で仕事をするうちに」などといった、いわゆる『自然な』恋愛というのも良いものですが、そこからあぶれたものはどうなるのか?非モテは一生非モテのままなのか?そこに自由意志の介在する余地はないのか?
オープナーやラポールといった、専門用語や心理学の用語も出てきます。簡単な説明もありますが、予備知識のない人は調べながら読むと良いでしょう。
(おわり)